小鍋立の湯
丸子町の砂原峠に小鍋立(こなべだて)の湯という温泉跡があります。
以前は皮膚疾患に効く温泉ということで湯屋もあったそうですが、いつの頃からか今のような更地になっています。
こちらが湧き出している温泉の井戸だということです。鉱泉ですので暖かくはありませんが、底の方から断続的に泡が吹き出している様を見ると、何となく温泉ぽい感じが湧きます。
さて、この「小鍋立」の名前の由来ですが、伝説があります。ちょっと調べてみましたが、インターネット上に情報がありませんでしたので、私が聞いたところの伝説の概要を紹介してみます。
昔、砂原峠に山姥が住んでいました。恐ろしい顔をした山姥がふもとの村々に悪さをするので、村人たちはとても恐れていました。
そのうち、山姥は村から娘を一人さらって来て、自分の召使としてこき使い始めました。娘は山姥が恐ろしいもので、逃げ帰ることも出来ずに山姥の言う通りにするしかありません。
そうこうしてある時、山姥が娘を一人置いて家を留守にする日がありました。娘は食べるものもろくに与えられていませんでしたので、鬼の居ぬ間にということで、米やら野菜やらを入れて鍋を作り始めました。
さて鍋が出来上がりさあ食べよう、という時に鬼婆が家に戻ってきてしまったのです。見つかれば殺されると思った娘は、とっさに鍋ごと井戸に放り込んでその場をやり過ごしました。
ところが、その井戸の水で毎日のお風呂や炊事をしているうちに、不思議なことにあばたやできものだらけだった山姥の顔がつるつるとしてきたのです。そうなってくると日に日に山姥の心もおだやかになり、いつしか人の良いお婆さんになってしまったのです。
こうして、娘とお婆さんは二人仲良く湯屋を始め、ふもとの村々からのお客でたいそう繁盛したそうです。
というようなお話でして、小鍋立の湯が皮膚病に効くというところから作られたものなのかも知れません。山姥すら人の良いお婆さんになってしまう、という話はなかなかに微笑ましく、楽しいお話です。
小鍋立の湯の位置はこちらになります。
より大きな地図で 小鍋立の湯 を表示
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